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相続と信託について
相続と信託の関連 ― 新しい財産承継の考え方
日本では高齢化や家族形態の多様化に伴い、従来の相続制度だけでは対応しきれない場面が増えています。こうした中で注目されているのが「信託」、特に家族信託(民事信託)です。相続と信託は別の制度ですが、財産承継を考えるうえで密接に関係しており、それぞれの特徴を理解することが重要です。
相続とは、人が亡くなった時点で、その人の財産や債務が法律に基づいて相続人へ承継される仕組みです。民法では法定相続分が定められており、遺言がない場合は原則としてその割合に従って分割されます。遺言を作成することで、ある程度自由な分配は可能ですが、遺留分などの制約もあり、将来にわたる細かな財産管理までは指定できません。
一方、信託とは、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる人(受託者)に財産の管理・処分を託し、その利益を特定の人(受益者)のために使ってもらう法律関係です。信託は生前から開始でき、委託者が亡くなった後も契約内容に従って継続します。この点が、相続との大きな違いです。
相続と信託の関連が特に注目される理由は、「相続対策として信託を活用できる」点にあります。たとえば、認知症になると本人名義の財産は原則として自由に処分できなくなりますが、生前に信託を設定しておけば、受託者が継続して管理・運用できます。これは、単なる相続対策にとどまらず、将来の財産凍結リスクへの備えともいえます。
また、信託は相続では実現しにくい「二次相続以降の指定」が可能です。たとえば、「自分が亡くなった後は配偶者に財産の利益を与え、配偶者が亡くなった後は子どもに承継させる」といった設計ができます。通常の遺言では一代限りの指定しかできないため、長期的な財産承継を考える場合、信託は有効な選択肢となります。
ただし、信託を利用すれば相続が不要になるわけではありません。信託財産に含まれない財産については、通常どおり相続が発生しますし、信託受益権は相続財産として扱われるのが原則です。税務上も、相続税や贈与税の課税関係を正しく理解して設計しなければ、思わぬ不利益が生じる可能性があります。
このように、相続と信託は対立する制度ではなく、補完関係にあります。相続は「亡くなった後」の財産承継を定める制度であり、信託は「生前から死後まで」を見据えた柔軟な財産管理・承継を可能にする仕組みです。家族構成や財産内容、将来への不安に応じて、遺言・相続・信託を組み合わせて考えることが、これからの時代にはますます重要になるでしょう。